公開シンポジウム・課題研究

公開シンポジウム
「教育者の資質・能力と力量を考える:教育現場と教師教育研究との間」

日時

2021年10月2日(土)14:30~17:30

趣旨

 Society5.0、SDGs、STREAM、GIGAスクール構想、働き方改革のように、新しい時代に向けて教育、学校、教師を取り巻く状況は大きく変化している。そのような中、2021年1月には中央教育審議会から「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」が答申されるとともに、3月には「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」が諮問された。そこには、小学校課程の要件緩和、複数学科等間での共通開設、教職課程における連携開設制度、教員養成フラッグシップ大学、「情報通信技術を活用した教育に関する理論及び方法」の追加、教員免許更新講習の見直しといった、具体的な問題が含まれており、教師教育のあり方について根本的な問い直しが迫られている。

 そこで本シンポジウムにおいては、大会テーマ「教育者の資質・能力と力量を考える」のもとで、教育現場と教師教育研究のあるべき姿について検討する機会を設定した。

 具体的にはまず、コロナ禍に伴う新しい生活様式が生まれつつある中、教育者に何が求められているのかについて、中央教育審議会の動向を視野に入れながら整理する。それとともに、長期休校、学校行事の縮小、GIGAスクール構想をふまえたICT教育の充実といった教育現場の変化に対して、教育者は日々どのような実践を行い、どのような課題を感じているかを分析する。さらに、目指す人間像や周囲の状況が多様化する中で、教育者の資質・能力と力量について、教師の専門性研究の観点から検討する。そのうえで、これからの時代における教育者の育成や力量形成の方法と課題について、教員養成の実践研究の視点から考察する。

 以上の議論をふまえて、教師教育の実践と研究において、今後何を目指していけば良いかについて、各会員および学会の方向性を見出していきたい。

内容

【シンポジスト】
 1)荒瀬 克己(独立行政法人教職員支援機構)
   「教師の主体的・対話的で深い学びの実現を -2021年1月26日答申を受けて-」
 2)小柳 和喜雄(関西大学)
   「教育の情報化と教育者の役割」
 3)安藤 知子(上越教育大学)
   「今、教師には何が期待されているのか
   -目指したい「新たな教師の学びの姿」とはどのようなものか-」
 4)渡辺 貴裕(東京学芸大学)
   「教師に説いたり求めたりすることをわれわれ教師教育者は行えているのか」

【司会】
 高谷 哲也(鹿児島大学)、樋口 直宏(筑波大学)

課題研究Ⅰ(9月20日に事前開催の上、オンデマンド配信します)
「変動する社会の中の学校・教師の再定義―COVID19のインパクトを問う」

日時

2021年9月20日(月)13:00~16:00

趣旨

 質の高い優れた教師の育成は、教育政策においても、養成機関としての大学においても喫緊の課題であり、また、教師教育学会にとっても長年にわたる中核的なテーマである。

 近年、「GIGAスクール構想」「令和の『日本型学校教育』」「未来の学校」などの新たな教育政策や、<思考力・表現力・判断力><深い学び><プログラミング学習><小学校英語>などの新しい学習・教育課題が次々と提示され、それが教職の履修内容に反映され、現場でも評価基準の新たな作成や指導技術の獲得・向上に取り組まれるようになっている。

 しかしながら、政府によって提示された未来や教育像が、果たして適切なものであるかといった問いや、こうした趨勢が、学校や児童生徒の「学び」を窮屈に、また過剰に統制していくことにつながったり、教師の自律性をますます狭め、専門職とは名ばかりの「考えない教員」「狭視野的教師」「目的なしの技術論に傾斜した教師」を輩出することにつながるのではないかというような疑問は、ここにはほとんど示されていない。

 また、コロナへの対応における 急速なICTの導入、「個別最適な学び」など政府が意図する政策が有無を言わさぬ力で推進する状況となっている。さらに、経済的なグローバリゼーションが進展する中で、「教育=<「人材」育成>」に一元化されようとしている。こうした状況に対し、改めて教育とは何かを、担い手としての教師の役割とは何かを考えること、これが迂遠ではあるが、教師教育を語る大前提になるのではないだろうか。

 三年にわたる本課題研究の一年目として、今年はまず、現代の教育を取り巻く社会状況をマクロな点から検討し(第一報告:佐藤学先生)、新型コロナ感染症下の現場教員がこうした課題をどう受けとめているの(第二報告:東大G)、現代の学校においてケアや平等・公正といった領域がどのように変容しているのか(第三報告:柏木智子先生)を報告してもらう。こうした報告をもとに、マクロとミクロをつなぐ議論を参加者との間で共有しながら、現代の学校教育・教師役割の課題を明らかにする。

内容

【司会】
 油布佐和子(早稲田大学)

【報告者】
 1)佐藤学(東京大学名誉教授)
  第四次産業革命と教育の未来

 2)有井優太、岩堀翔太、影山奈々美、中野綾香、永杉理惠、望月美和子、渡部裕哉(東京大学大学院教育学研究科)
  コロナ禍における学校・教師の問い直し:教師の語りから

 3)柏木智子(立命館大学)
  学校における公正・ケアの促進と「学び」の展望」

課題研究Ⅱ
「日本の大学における教員養成と教育学―多様な「場」をつなぐ論理を探る―」

日時

2021年10月3日(日)13:00~16:00

趣旨

 日本では「大学における教員養成」原則のもと、学士課程教育カリキュラムの一部に教職プログラムを含む形でカリキュラムが組まれています。また、免許状授与の「開放制」原則のもと、多様な組織運営形態を持つ大学で広く教員養成が行われていますが、そこでの教育学の位置づけや内容は様々です。

 近年の動向としては、文部科学省による「教職課程コアカリキュラム」の策定(2017年)とそれ以後の課程認定行政との連動といった形で大学の外側からの統制が強化される一方、日本学術会議では「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準」の一環として教育学分野の参照基準が公表(2020年)されています。

 では、日本の各大学ではこうした動向をどう捉え、どのように学士課程における教員養成のカリキュラムを策定・運用しているのか、その中で教育学はどう展開されているのでしょうか。今回のセッションではまず、様々なタイプの大学における教員養成と教育学の課題を語っていただき、それらを共有した上で、共通して取り組むべき課題を探りたいと考えます。

内容

〇内容

【司会<コーディネータ>】
 鹿毛雅治(慶應義塾大学)、勝野正章(東京大学)

【報告者】
 1)岩田康之(東京学芸大学)
  教員養成系単科大学における教員養成と教育学―東京学芸大学の組織とカリキュラムから考える―

 2)高旗浩志(岡山大学)
  国立総合大学の教職教養科目―教育学部と開放制教職課程を有する大学の一事例―

 3)中嶋(高津)みさき(女子栄養大学)
  問われる教育学の独自性、自律性―実践栄養学を踏まえた教職課程の現状と課題―

 4)坂井俊樹(開智国際大学)
  新設小規模大学の立場から―開智国際大学教育学部の場合―

課題研究Ⅲ
「多様な教職ルートの構造と実態に関する国際比較研究(1)―諸外国における多様な教職ルートの諸相―」

日時

2021年10月3日(日)13:00~16:00

趣旨

 課題研究Ⅲ(国際比較・交流)では、世界各国・地域における多様な教職ルートに焦点を当てて、その構造と実態を探る研究を進めている。わが国を含め、多くの国・地域では、教職に就くための複数の教職ルートが存在している。また教員不足や新たな教育ニーズへの対応という観点から、多様なキャリアや背景を有する人材が教職に就いている傾向も看取できる。本課題研究では、こうした多様な教職ルートの構造と実態を比較分析することを通して、これからの教師教育制度や実践をどう構想していけるかを考えたい。

 本大会では、課題研究の1年目の成果として、まずは諸外国における多様な教職ルートの諸相を報告する。具体的には、アメリカ合衆国、ノルウェー、中国、ドイツの4か国を取り上げ、それぞれの国において多様な教職ルートがどのような文脈の中で存在しているのかを整理し、その特徴を考察していく。その上で、比較分析を通して世界的な傾向を明らかにするとともに、わが国の状況を相対化し、その特徴や課題に迫っていく。

内容

【司 会】
 北田 佳子(埼玉大学)、佐藤 仁(福岡大学)

【報告者】
 1)小野瀬 善行(宇都宮大学)
  アメリカ合衆国における多様な教職ルートの現状と課題

 2)中田 麗子(信州大学)
  ノルウェーにおける教員養成の高度化と多様化

 3)張 揚(北海道大学)
  中国における「特職教師」政策の実施背景と現状について―農村地域における教員不足の問題に着目する―

 4)辻野 けんま(大阪市立大学)
  ドイツにおける教師教育の変容

若手研究者育成支援部
ミニシンポ「『保幼こ・小』の接続期を担う教師の力量形成―養成と研修ならびに資格制度の課題」

日時

2021年10月3日(日)16:30~

趣旨

 若手研究者育成支援部は、第10期の「研究推進・若手交流支援企画」の活動を継承し、本学会に集う若手研究者育成支援の活動を支援する部会である。第31回大会では、昨年度大会のテーマ「「教師の力量形成における実際とそのあり方 ―幼児期の教育と小学校教育を中心にして―」を継承し、「「保幼こ・小」の接続期を担う教師の力量形成 ―養成と研修ならびに資格制度の課題」と題するミニシンポジウムを開催する。「保幼こ・小」の接続期における子ども理解と養成教育・教師教育並びに資格をめぐる制度設計の課題についてさらに議論を深めたい。なお、本部会では「若手」を年齢的なことで定義するのでは無く、大学院生や本学会への入会後間もない会員をも対象とし、間口広く受け容れることとしている。

内容

【話題提供】
 伊藤聡子(蕨市立中央小学校)、奥泉敦司(金沢学院大学)、吉永安里(國學院大學)

【担当理事】
 高旗浩志(岡山大学)、金子真理子(東京学芸大学)、前田一男(立教大学)

【サポート会員】
 望月耕太(神奈川大学)、小田郁予(東京大学大学院)、田中里佳(上野学園大学)、渡邉巧(広島大学)